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オードリー・若林正恭

 大学で「自分にとっての知的パトロン(知的アイドル)」という題のレポート課題が出た。教授は例として、"知的パトロン"という意味のよく分からない言葉にも何となくしっくり来るような学者の名前を挙げていた。僕は締め切りが迫っていたこともあり、調べたてほやほやの学者を突如"知的アイドル"として奉るのではなく、日常的に最も知的ボディブローを私に浴びせてくるオードリー・若林正恭(以下、「彼」及び「若ちゃん」)を挙げた。以下はそのレポートを推敲して書き直したものである。

 

 彼を意識し始めたのは大学一年の春だった。上京した僕は新天地・八王子での生活の多くに悩み(それまでの十八年とは環境があまりに違い過ぎた)、友人から勧められた『オードリーのオールナイトニッポン』を聞き始め、彼の考えに共鳴し、彼の著書『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込』を買って読み耽った。学者の本ではないが、何度も繰り返し読んだ私のバイブル的一冊である。

 

 彼のどんなところに共鳴したのか。それは"超"が付くほど繊細で、「気い使いい」で「気にしい」で。そして何より自意識の余りに高過ぎる部分である。僕も上京したての頃は周りの人(聞き慣れない標準語を話す!)の言葉に過敏に反応し、気を使っては、ちょっとしたことですぐ傷心モード。そんなとき聞いたオードリーのラジオの中で若ちゃんは「こんな世の中生きづらい」という旨の発言を何度もしており、幾度となく救われた。中でも印象に残る若ちゃんエピソードに以下のようなものがある。


 昔は飲み会で酔った人にあけすけに否定されるのが怖く、飲み会が嫌いであった。飲み会中にトイレの個室に篭ってイギリスのパンクバンド・セックスピストルズのシドヴィシャスの動画見ていた。自分を否定できないから外の世界を否定しないと(=飲み会を否定)保てない。しかし今は何でもいいと思っている。俺も間違っているし、全員間違っていると思っている。こう思えてから飲み会が楽しい。(2016.01.30放送『オードリーのオールナイトニッポン』より)


というものだ。正直『痛ってぇ』と思う自分もいる。だが不思議なことに『痛ってぇ』の嘲笑と同時に、『分かるぅ〜』の微笑みがこぼれている僕がいた。傷つけられるのが怖く、それ故周りの発言に過敏になっていた。先にガードを作ろうとして。このエピソードを聞き、ある意味で適当に場に馴染むということを覚えた。適当に話している人の話を本気で受け取っていたらやってられへん!人付き合いで大事なのは"まじめにふまじめ"なんだなあ〜と。そういう緩急をつけられる人が人間らしく社会に順応できているんだ。(驚くべきことに大半の人はそんなこと脳で考えずにやってのけているのだ!)しかし僕はこのエピソードを聞いて大袈裟ではなく視界が変わった。


 彼の自意識過剰なエピソードは著書『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込』にも数多く収録されている。スターバックスでグランデと頼めない(S/M/Lで言わせて)、お昼ご飯のことをランチと呼ぶことが恥ずかしいなど。それを誰も見ておらず、咎める人がいないことも自覚しているという。『だがしかし、だ。ぼくなのだ。ぼくが!見ているのだ!』(本文抜粋)

 

 こんなことをいちいち考えずに済んでいる人は本当にラッキーだと思う。僕みたいな人は何かがずっと頭蓋骨と頭皮の間のスペースにキズパワーパッドみたく張り付いている。

 

 ただ、自分が考えない人になりたいとは思わない。もうおそらく考えずにはいられないし、考えてるから僕なわけで、"考えない人"になった瞬間、自分で無くなる気がする。

(でも十年後、二十年後も小さなことを『なんでその順番でせなあかんの?』、『なんでみんな黙って従ってんの?』と考えていることを想像すればゾッとする。だって大概が『そういうもんやねん!!!』で飲み込むものだから。)
 

 また、彼はネガティブから脱するにはポジティブではなく没頭が大切だと説いた。暇と飢えと寒さが人をネガティブにするのだと。一人暮らしを始めた頃の私はとにかく時間を持て余し、(傷つくことから逃げていた!)自分で何かしなければ食卓には何も並ばなかったし、八王子の春は寒かった。そんな環境でネガティブになっていた私を救ったのは趣味への没頭だった。絵を描いているとき、本を読んでいるとき、文章を書いているとき、確かに私はネガティブから逃れることができた。そんな必殺技を教えてくれた彼は私の救世主である。

 全・若林正恭や僕のような人間に捧げます!ぼちぼち生きていこうな。フットサルサークルとかゆきぽよみたいな集団には多分馴染まれへんけどそれなりにおもろいよなー!

 

以上です。読んでくれてありがとう。ミッフィーちゃん。