ウィケズィリウォハスィ!!!ウィケズィリウォハスィ!!!
何もかも、分からなかった。僕が日本人と分かるや否や、謎の呪文を飽くことなく5、6度唱え始めたのだ。文脈から推測するに恐らく日本語を話しているのだろうが、後に聞くに御年71、記憶の薄れと喉のかすれは盛りにみえて、"ウィケズィリウォハスィ"を連呼するサスペンダー白髪ヘビースモーカーホワイトによるある種の、恫喝だった。ウィケズィリウォハスィ。。。
息を吸えばゼエと鳴り今ここで息絶えるんではないかというような咳をするお爺である。
"ゲッフゲッフ、ウィケズィリウォハスィ、いちにさんし!"
やっぱり"ウィケズィリウォハスィ"も日本語らしいな。
話を進めると、日本人の留学生をホームステイとして受け入れてたらしい、それで日本語を知っているのか。今まで現地のお爺さんが何度か絡んできたことがあるが、彼ら全員もれなく、間髪入れずにひたすら喋る。こちらに質問の隙を与えない。今回も例外でなく、マチュピチュに犬を連れて行こうとしたら酸素薄くて犬は呼吸できひんとかどうのこうの。(いつ行ったん?って聞いたら行ったことないって言われた。は?)
そんなことが続いてまだ話を止めるそぶりもないので、もうこっちから仕掛けてやろうと思った。
「日本の留学生はどうやったん?」
"Fine." と、即答。
からのべしゃりの再開、また舵を握らせてしまった、と思ったら
"My wife is Japanese."
が突然ふっと彼の口をついて出てきた。そんなん、もっと、早よ、言わんかい!
「え!奥さん日本人?!奥さんが?!」
って反応したら、
「そらわし71やで、奥さんくらいおるわいな。」
ってそこちゃうやろ、そんなん言うてんちゃうねん。
そして次に僕がした質問は僕を絡まった毛玉のような会話から救うことになった。
「奥さんの出身は?」
"SETAGAYA! ウィケズィリウォハスィ!"
あ、池尻大橋!?!?
池尻大橋が全ての日本人に速攻で伝わると思って開口一番叫ぶ爺の健康を祈ります。ほんでええとこやな。疲れたーー。